学校へ行こう!!!


英荘の共同リビング。午前 0時を回っている。フォルはもう普通の服に戻って いが、どことなく疲れているように見える。
「一時はどうなることかと思ったよ」
「すみません、貴也さん」

「お風呂沸いたよっ!!」
ベルが呼びに来る。
「貴也さんどうぞ」
「いいよボクは最後で…それよりフォル、キミこそ疲れてるみたいだから、先 に入って早く休んだほうがいいよ」
なるべく疲れを見せない様にしていたが、貴也の目は誤魔化せない。

「はい、それでは。今日はお言葉に甘えて」
無理に断るのも失礼と思ったのか、フォルは素直に風呂場に向かった。
「いってらっしゃ〜い」
出ていくフォルに軽く言うリア。
「アタシにお茶!!!」
「え?」
ベルに命令するクレア。


「う…まずい……」
「……」
お茶を飲むクレアを固唾を飲んで見守るベル。
「ベル、お茶くみ失格!!!
“S2”
実は嬉しい。何故かと言うと…
「しかたない…今度からフォルがいないときはリアが入れるよーに」
「ええええっ!?」
リア、ベルを睨みつける。
“はっ!?”
二人の喧嘩が始まった。

「ねぇ…ところで、あのときフォルの神機が」
“ぎくぅ”
来た…急いでこれから来るであろう質問の返答を考えるクレア。
「確か…『この地がハルマゲドンですか?』って……」


“……あのとき、一つだけ思い出したわ…わたしの…もう一つの使命……”
湯舟に浸かりながら惟(おも)うフォル。皆の前では見せなかったが、かなり辛 そうで動作が緩緩。
“貴也さん…”


「あの…‘ハルマゲドン’って?」
表面上はにこやかに問う貴也。クレアも、リア・ベルも喧嘩を止めて冷汗た〜 らたら。クレアを見る貴也。
「うーん、お茶うけには吾作饅頭…いや待てよ、柿羊羹もいいな…」
ベルを見る貴也。
「あっ!あたし、フォル姉様の背中を流してこようっと!」
逃げたな… リアを見る貴也。
「え… ああっ!!!あれ、アタイも好きなんだ。あったかいご飯にいろんな具を 混ぜてる、天ぷらが乗っててさ… ってそりゃ‘カキアゲドン’だって!!!」

“……”
一堂、5秒間思考停止。
「知ってどうするの?」
業を煮やして話し出すクレア。リアはまだ固まっている。
「知らないほうがいいことだってあるんだよ。アンタがどうしても知りたいの なら、教えてあげてもいいけど…後悔しても知ら…」
大変!!!フォル姉さまがっ!!!
ベルが共同リビングに飛び込んで来る。


皆が急いで風呂場に向かうと、そこでフォルが仰向けに倒れている。当然全裸 で。
クレア「フォルシーニア!?」
貴也「とりあえず部屋に…う゛」
ベル「ああっ貴也入っちゃダメだってば!!!」
リア「貴也!!鼻血が


フォルの部屋、フォルはベッドで静かに眠っている。
「心配いらないよ。神機とコンタクトして疲れただけ!じゃアタシは先に眠る わね。おやすみ〜」
クレアはフォルの無事を確認すると自分の部屋に向かった。少しでも異常があ ると決して離れないだろうが、無ければさっさと引くのがクレアである。
「貴也さん、明日から学校でしょう?フォル姉さまはあたしたちがみてるから」
「リアさえ許してくれるんだったら、ボクもここでみていたいけど」
「そんなにアネキが心配ならここにいればいいじゃないか」
「ありがとう、リア」
“……”


裸で寝ているクレアが不味いお茶の悪夢にうなされている頃、貴也とリアとベ ルの三人は壁際に腰かけてフォルを見守っていた… 筈だったがベルはすでに 眠っている。貴也の左肩に頭を預けて。ベルは力尽きたが、リアはまだじっと フォルを見つめている。その目に涙が溜っているのに貴也は気付いた。
「リア…どうしたの」
「なんだ貴也、まだ起きてたのか?」
「…本当にフォルのことが好きなんだね」
「あったり前じゃねえかそんなこと!!!」

沈黙の後、
「姉妹なんだから……」
「……」
「……アネキはね、やさしいんだ…こんな‘鬼っ子’のアタイにも…ね」
「鬼っ子?」
「アネキたちと違うってこと…アタイは」
「…深い意味はわからないけど、それでもいいんだと思うよ。ボクだって…キ ミたちと生きてきた世界も違うけど…今こうして一緒にいるじゃないか…」
“……”
点描と共に貴也を見つめるリア。
「ア、アタイは天使だよ。貴也なんかと一緒にするなっ!」
笑みを浮かべる貴也。


トントントントン…
俎の音が貴也を起こす。見ると台所でフォルが朝食を作っている。Tシャツだ けで、下に何も履いてないのが色っぽい。
「フォル?」
「おはようございます、貴也さん」
「もう大丈夫なのフォル?」
「すみませんでした。ご心配をおかけしまして…」
「姉さま!!!」
「アネキ!!!」
双子たちも目を覚ます。
「あなたたちにも心配かけたわね。さぁもうすぐ朝ごはんだから…顔を洗って 着替えていらっしゃいな」
「は〜い」


「…姉さま似合う?」
「アネキ、これって」
セーラー服でポーズをとるベル、反対にけげんそうなリア。面倒臭いのでセー ラー服のリボンは付けていない
「今日から双子たちは中学校に…わたしは貴也さんと同じ高校に通うことになっ ているのです」
フォルもセーラー服を着ている。高校の場合はリボンが紐状になっている。

「そんな急に…いろいろと面倒なことが…」
フォルたちが学校に通う事を信じてない貴也。
「だからいったろ‘操作’したって… アタシたちを受け入れさせるために、 関連するすべてのことを都合のいいように変えてしまったんだ!」
イケイケ(死語)な格好で登場するクレア。
「そんなことして、不都合がないのかな?将来や…未来だって変わってしまう かも…」
「神機には‘リミッター’が付いてて…ムチャなことはできないようになって るのよ。だから昨夜…フォルが言ったでしょ。20km四方を操作したって…それ 以上の操作は、何らかの影響が出るから、したくたってできなかったのよ」
「ふぅん…そうなの?フォル」
「そういうことになりますね。さあ、そんなことよりお食事にしましょう。学 校に遅刻してしまいますもの。クレア姉さまも早くしないと、今日から大学生 ですから」
「ななななんでアタシまで」
「あの日がくるまで天界でお待ちになるのですか」
「う゛」


tomoka-m@is.aist-nara.ac.jp
Last modified: 2000/ 7/15 4:36
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