貴也フォルを見る。フォルは貴也を見てる。双子達は 2人を見てる。
「…とりあえず、部屋に入ってお茶でもどうかな? ぜんぜんかたしてないけ
ど…」
英荘 1階、共同リビング。机を囲んで 4人が座っている。机の上にはセンベイ
とお茶。リアはバリボリとセンベイを食っている。
「666 の項目に該当しなかった?」
「…そ!アンケートしたでしょ…新宿で」
「それが切っ掛けなの?」
「それでね…」
「よーしっ!この人だったら大丈夫ね…」
ベルは先程貴也に行なったアンケートの集計を手早く済ます。32の質問の答え、
答えの行間、答えた時の心理までもデータに入れて、 666 の項目を彼女の神
機レオニスと連動して計算する。
「レオニス!」
『確認しました… トレース開始します』
レオニスのセンサーが駅の階段を登っていく貴也をロックする。
「リア!こっちは OK よっ!」
通信機でリアを呼ぶが反応が無い。
「リア……リアったら!」
『…星に代わって切諌よ!』
テレビの音が聞こえる。
“……リアったら…”
『…ぁいあ〜そうる!』
「――リア!もういい加減にしてよっ!!」
「ん!? ちっ!今…いいトコなのになぁ…」
やっと気付いたリア。でも不満気。
「ついに見つけたのよ!!レオニスがデータを送ってるでしょ!」
「あ!……確かに。サイズ変えてたんだ…」
『…れせんとび〜っむ!』
なおも流れるテレビ。コンソールの正面の良い場所を確保している。その脇に
小さくレオニスのデータを受信している画面がある。
「それじゃあ…後はアナタの役目だからネ!」
段々怒りが湧いて来る。
「はいはい!降下させまーす!」
『待ちなさいよ降下って……リアは今どこにいるのよ?』
「宇宙(おそら)だよ…」
大気圏外。リアの神機アルデバラムはクルーズモード(飛行形態)で浮いている。
その先端部のハッチが開き、銀色のフロッピーディスクが輝きながら落下して
いく。その状況はベルにも伝わる。
「大丈夫…ちゃんと計算してあるもん!あれは摩擦熱にも耐えられるし…自由
落下後の衝撃にも耐えられるんだから。バッチリじゃない!」
「拾ってもらえなかったら…どうするの?」
「う゛」
頭が痛い…
「…そんなこんなで現在にいたる訳です……」
「それじゃあ、あのフロッピーは…初めから僕が手に入れる予定の物だったの?」
「そういうコト!貴也さんはあたし達が 12年かかってやっと見つけた‘ベス
ティア’ではない人……だからフォル姉様をゆだねたの…
「私を…なぜ?」
「アネキの覚醒を遅らせるタメに…」
「リアが不精しないで貴也さんに手渡してキチンと説明してればこんなコトに
はならなかったんだけれども……」
「フンだ!!! アタイが責任持ってディスクのデータ再生すればいいんだろ!ディ
スクはどこさ!?」
さーーっ…… 血の引く音。貴也はゆっくりと自分ののパソコ
ンを指さす。フロッピーディスクドライブが黒焦げになっているパソコンを。
それに気付いて驚呼するリア。
「なんだよコレ!?だから人間の造る物ってダメなんだよ!!!」
「‘人間’って…じゃあキミたちは何者なの?」
「天使ですよ…アタシたち」
「え!?」
思考が一瞬止まる。
“このコは…フォルはそう言われても信じられる…ベルってコも素直そうだけ
れど…問題なのはリア……”
ピク!
「たかが人間のクセにアタイのどこが問題だってのさ!」
「リア…さん。いけませんよ、そんな風に貴也さんに言っては…」
フォル、リアをたしなめる。
「アタシたちは…ネ。人間の考えてるコトがわかるんだよ!」
「えっ?そ、そうなの?」
「‘リアさん’かぁ…本当にアタイたちのコト憶えてないんだね。アネキって…」
「ゴメンさない…」
落胆するリアとフォル。ただでさえ悲しげなフォルが、さらに悲しげになる。
「…で、これからどうするの?キミたちは??」
「アネキは?」
「姉様は?」
フォルに確認する双子達。
「私は…貴也さんと一緒にいたい。‘ベスティア’から貴也さんを守りたいん
です」
ちょっと嬉しい貴也。
「じゃ、そういうことで…アタシたちもよろしくネ!!」
「しょうがないからここにいてやるか…」
「そうすか…」
こっちは嬉しくない…
「それじゃあ…アレ…何とかしてくれるかな?‘この世界’ではあんなモノ見
慣れてないんだから…」
「あんなモノだってェ!?」
貴也を睨みつける双子達。
「ここで暮らすつもりなら貴也さんにそんなコトを言ってはいけませんよ……」
「はぁーい!隠して来まーす!!!」
「あら…」
ゲンキンな双子達。リアは「とう!」などと言って降りて行く。
「本当に…あのコたちキミの妹たちなの?」
「わかりません…でも…いいコたちですよね?」
「そうかなぁ…」
先行き…不安……