TITLE フォルの望み KEYWORDS 電脳天使,小説,ノベライズ MAIL_ADDRES tomone@kikyou.sakura.ne.jp BGcolor #FFBBEE TEXTcolor #000000 PREV_PAGE Comic-06.html PREV_PAGE_TITLE 第6話 NEXT_PAGE Comic-08.html NEXT_PAGE_TITLE 第8話 RETURN_PAGE ./ RETURN_PAGE_TITLE 戻る END 『さあ命じてくださいフォルシーニア…どのようなことでも』 アクエリュースは淡々と問う。クレアと双子たちはパニック。 「?」 状況がつかめない貴也。 「どんな…ことでも?」 アクエリュースを見つめるフォル。 「電車…早くこないかなぁ」 新宿駅。馨子の腕時計の針は 10時17分を指している。 「だめだよフォル!! まだその娘の力を解放する時期じゃ…」
「大丈夫ですよ姉様」 にっこり微笑むフォル。クレアと双子たち、蒼白となる。 「だ、大丈夫って…いったい何が!?このままじゃアタシは 役目を…」 ここまで言いかけて詰まらせる。 「役目を?」 「……」 貴也の質問にも答えない。 「あなたはわたしの片割れ、そうでそう?」 『はい、フォルシーニア』 「それでは…」 まるで‘完全体’の様に表情が厳しくなり、服が異世界の物へと変わる。 「始まっちゃった…」 諦め顔のベル。そう、今フォルを止められる者は誰もいない。 「我が心と融合せよ。我が心と一つになりて、汝のワザを命ずるまま に行使せよ!」 アクエリュースを中心に光―感覚インパルス波―が広がっていく。辺り一面真っ 白。目を開けていられない… ドーム状になった感覚インパルス波が立川駅を飲み込む。送電線に火花が走る。 人々にめまいが起こる。光 はない。光と感じたのは貴也の錯覚。 『発車します。駆け込み乗車はおやめください』 中央線、中野駅。車内は酒飲みの帰宅ラッシュで込んでいる。ドアが締まった 後、不意に車内燈が消える。 “電車が停電になんかなる?普通…” 車外の駅や街は停電になっていない。感覚インパルス波が武蔵境駅と三鷹駅の 間にある給電所を襲ったので、電車だけが停電になったのだ。 「!?」 突然、ビクンッ!! と馨子の身体が硬直する。何者かの手が馨子のお尻に触れ ている。 “生き終るワケじゃないわ。お小遣いが減るワケでもないし…成績が下がるワ ケでも……” 身体中に悪寒が走る。脈拍が上がる。気分が悪くなってきた。まだサワサワと しつこく動いている。男の中指が窪みを強く圧迫し、下ってくる。 “だけど…” 「もうっ!いい加減にしてよね!!!」 右腕を後ろに回して男の腕を掴み、振り向きざまにひね 上げる。その瞬間車内燈が灯る。 「あら?」 「あ…」 「岡田さん?」 「青木…先輩?」 青木渉平。高森尾高校 3年、前生徒会長。高森尾市市長の息子。慌てて手を離 す。 「いやぁ…ゴメンね。急に暗くなったから‘クレア’がカゴの中で暴れちゃっ て…」 「青木先輩、‘クレア’って?」 「仔猫だよ、シャム猫の」 と腕を上げ、篭を見せる。中では‘クレア’が丸まって 眠っている。 「あたしったら勘違いして、すみません…」 「いや…いいんだよ」“フッ…” いいのか馨子、気付けよ。あんまり男を、いや、こいつを信用するんじゃない ぞ。それから青木!羨ましいゾ!!この野郎!俺と変わ… バキィ!!! 『――ただいまの車内停電は、武蔵境給電区からの送電が遮断されたために起 こりました。原因は現在調査中ですが、運転は再開いたしました……』 ガタンッ――と、動き始める電車。青木と馨子は楽しげに話している。 「あたし、こんど、下宿させられるんですよ」 「へえ……いつごろから?」 「さっきの光…?いったい何が起こったんだ…何も変わりはないみたいだけど…」
そう、何か起こった様子はない。 「……」 無言のクレア。 「なんで?」 これはリア。 「よかった…」 これはベル。 「フォル…いったい何をしたの?」 貴也はフォルに歩み寄って質問する。 「半径 20km四方の地域内を‘操作’しました。わたしたちが、ずっとここで 貴也さんと暮らしていけるように…」 「半径 20kmというと?」 「ここからだと、吉祥寺辺りまでじゃないかな……」 地理はベルの方が詳しい。 「まったく!!!そんなくっだらないことに神機を……」 「クレア姉さん…」 「誰のせいで神機がきたんだよ…」 双子たちの目は座っている。 「フンッ!!最後があれば最初があるのよ」 「???」 意味が分からない貴也。 ツン…リアがフォルの服の飾りを引っ張る。 「アネキ…ひょっとして記憶が戻ったんじゃ」 期待を込めて訊うリアだが、フォルは首を横に振る事で答えた。少しでもリア を悲しませないように微笑して、でも切なげなのは隠せない。 「てことは、アンタはディスクの修復を続けなければいけないワケだ…」 フォルの配慮はクレアの突っ込みで無駄になった… 『フォルシーニア…わたくしに命ずることはほかにありませんか?』 一難去ってまた一難。クレアと双子たちはまた蒼白する。 「アクエリュース、…わたしの望みはもうかなえてもらいましたもの。これ以 上、命ずることも…命じなければならないことも、今はもうありません」 『それでは、またお会いしましょうね、フォルシーニア』 アクエリュースが光に包まれ、矢の様に天に帰って行く。 「ふう…ん、良かった」 誰からも聞かれないように呟くクレア。 「だから…何が起こったの?」 アンタまだ取り残されてたの?>貴也 「ただいま!!!」 家に帰りついた馨子。父は新聞を読んでいる。 「お帰り、おや、今夜は友達の家に泊まる筈じゃなかったのか?」 「ねぇ…今夜、何か変わったことなかった?」 「ん?いや、別に何もなかったぞ」 「おかしいな」 父の向かいのソファーに座る。 「あ!?それから、あたし、いつ引っ越せばいいの?」 「えええぇぇぇ!?!?お前の家はここにあるのに、どうして出てい かなくちゃいけないんだ?」 「???」